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じんじ屋エールは自由設計が基本コンセプト。

じんじ屋エール

since1995

3ヶ月で作る!人事制度のツボ

メールマガジン『まるごと人事!超楽』vol.1〜vol.12に掲載した内容です。

   −目次−

【第1回】企業調査
【第2回】統計資料
【第3回】賃金診断
【第4回】基本構想
【第5回】賃金設計
【第6回】昇給・昇格
【第7回】賃金改定
【第8回】賞与配分
【第9回】退職金
【第10回】評価制度の設計
【第11回】評価者エラー
【第12回】評価結果の調整

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【第1回】企業調査

今日からB社の人事制度構築支援が始まります。うわぁ、なんかドキドキする
なぁ。今日は紺のスーツに白のワイシャツを着て清潔感のある印象を持っても
らえるようにしよう。B社への訪問は、契約のとき以来まだ2回目なので少々
緊張しています。これって気弱な性格からくるものなのでしょうか。何回場数
を踏んでも馴れるまではこんな調子です。

人事制度を設計するためには様々な情報収集が必要になります。そして、その
情報の中には、人事制度を作る上での制約条件となるものもあります。

最初に社長さんから「会社の経営理念や方針」を教えていただきます。経営計
画を立てている場合は、それにも簡単に目を通します。すると、なっなっなぁ
んと経営計画書の重点課題として「人事制度構築」が明記されているではあり
ませんか。しかも予算まで・・・うーん、今回の受託金額は予算オーバーだっ
たのね、なんてことまで分かってしまうこともあります。

次に会社の概要を知るために会社案内をいただきます。会社案内がない場合は
別の方法で情報収集を行います。
B社は製造業なので工場見学をさせていただきましょう。できるだけ製造工程
の順に案内してもらいます。途中、案内係の方から「この工程で不良発生率が
高いのです」などの説明があったら「ほぅ、そうですか。ところで、どうして
ですかぁ('_'?)」という具合に情報収集をしながら進んでいきます。目で見て
耳で聞いて、時々横やりを入れたりして・・・五感をフルに働かせるわけです。
まぁ、最終的には第六感がものをいうこともあるのですけど。

組織図のチェックは重要ですね。B社は正社員100人なのにすご〜く組織が
複雑です。1000人の会社かと勘違いしてしまいましたよ。そこで、これを
機会に機構改革もやっちまいましょう。
そういえば、以前お手伝いしたことのあるC社では、ある本に書かれている人
事制度のノウハウがとても気に入ったらしく「自社の組織を本のとおりに変え
ちゃいました。この本の内容と同じように自社の人事制度を作ってください」
とのご依頼でした。「えっ、組織変えちゃったのですか?」「はい、変えちゃ
いました」「・・・」。さすがにこれを制約条件として設計を進めるわけにも
いかないので、「その本を参考にしますけど、最終的には御社に合った内容に
しましょうね。その時にもう少し組織も変えちゃいましょうね。」と言って、
元の組織に近い組織ができあがったそうな。めでたし、めでたし。

それと忘れてはならないのが個人別の人事関連資料です。社員さんの属性、現
在の所属部署や役職、家族情報などかなり細かいデータをいただきます(後の
作業が楽になるようにできるだけ指定フォーマットに記入していただきます)。
賃金台帳も今年の分と去年の分を用意してもらいます。去年の賃金台帳から年
間の賞与や残業手当が分かりますので、概算年収を求める際に都合がいいので
す。残業手当を考慮して新賃金を決めることもあります。

なお、人事制度の再構築の場合には、既存の人事制度に関する資料も必須です
ね。「今までのは無視して、白紙でお願いします」と言われても、ぜーったい
もらっておいた方がいいですよ。


【第2回】統計資料

人事制度作りで使う統計資料といったら真っ先に思い浮かぶのが「賃金統計」
ですね。今回は「賃金統計」の選び方と入手方法についてお話しましょう。

賃金統計と一口にいっても発行機関は1つや2つではありません。まずは国や
都道府県などの公的機関で発行しています。それと金融機関や経営者団体から
発行されているものもありますよ。数えたことはないけど、たぶん何百という
機関から発行されているでしょう。
「え〜っ、そんなにあったらどれ選んでいいかわかんないよぉ ┓(´_`)┏ 」
はーい、それでは今から『賃金統計の選び方セミナー』の始まり始まりぃ。

普段よく使う賃金統計って、インターネット風にいうと『お気に入り』に登録
するようなものです。『お気に入り』に登録するのは、できるだけサンプル数
が多くて様々な角度から集計している賃金統計から選びましょう。"賃金診断"
に必要な統計データは業種別・都道府県別・規模別・性別・役職別・職種別な
どに対応する月額の年齢別賃金(実支給額)です。それと年収ベースの診断を
するために残業手当や年間賞与のデータも必要ですね。また、モデル賃金やモ
デル退職金も入手しておきましょう。

これらの条件を満たす賃金統計の代表的なものは何といっても「賃金構造基本
統計調査」でしょう。特に社会保険労務士の皆さん!毎年6月頃に行政協力で
企業を訪問している賃金調査があるでしょう。あれですよ、あれ。行政に利用
されっぱなしではなく、その賃金統計を目一杯活用しましょうよ。調査結果は
1年遅れで「賃金センサス」という4分冊の本になって市販されます(何ヶ月
か前に一部データが速報で出ます)。まあ1年前のデータでもベースアップが
少ない昨今では(ヘタな調整なんてせずに)問題なく利用できますよ。もちろ
ん「賃金構造基本統計調査」以外にも条件を満たすものがありますから、一番
いいと思うものをご利用ください。
ふぅ、これでやっと『お気に入り』が決まりました。ここでは『お気に入り』
=「賃金構造基本統計調査(賃金センサス)」としておきましょう。

次は入手方法です。「賃金センサス」は市販されていますから購入すれば用が
済みます。しかし、1冊1万数千円が4冊はちと高いです。頻繁に使うもので
はないし、欲しいデータは(1つの企業につき)数十ページしかありません。
しかも大きなサイズの分厚い本なので置いとくにも邪魔で、1年たったらチリ
ガミ交換ですよ。ああ、もったいない。そんなわけで、図書館で調べて必要な
ページだけコピーすることをお勧めします。

最初に地元の市立図書館に行ってみましょう。
「賃金センサスありますかぁ?」
「ごめんなさい。あいにく置いてないんですよ。高い本でなければ今度入れて
おくこともできますよ」〜‘高いんだよね、その本’〜
「いいですよぉ、それじゃあ悪いから。他をあたってみます」
残念!空振りに終わりました。

次に県立××図書館に問い合わせてみましょう。
「賃金センサスありますかぁ?」
「すみません。去年まではあったのですが、今年は予算削減で置いてないんで
すよ。県立△△図書館にはありますから2〜3週間待っていただければ取り寄
せますよ」
「そうですか。でも、すぐ使いたいので直接行ってみます」
どこも不景気ですねぇ。

実務では『お気に入り』以外のデータが必要になることもあります。ある依頼
企業なんて「地元の同規模同業種の賃金データと比較した〜い」という難題を
持ち掛けてきました。地元といったって都道府県レベルの話ではなくて、区と
か郡レベルのデータを欲しがっていたのですよ。『お気に入り』にはそんな細
かいデータはありません。そんな時は都道府県に問い合わせてみましょう。
都道府県で実施する賃金調査の中には、そのレベルの詳細な集計データを作っ
ているところもあります。ただし、サンプル数が極端に少ないデータは使えま
せんのでご注意を。


【第3回】賃金診断

ホームページの中に「株式会社サンプル25」という会社の賃金診断に関するグ
ラフや表を掲載しています。本文だけではどうもピンとこないな('_'?)という
方は該当ページのアドレスを載せてありますのでクリックしてみてください。

最初に定番のプロット図を作りましょう。
これは縦軸を金額、横軸を年齢として、賃金のバラツキや社員属性の違いによ
る賃金格差などを診るグラフです。
賃金のバラツキを見ると、普通の会社は"右肩上がり"になっているケースが多
いです。ようするに年齢が上がるほど賃金も高くなる傾向を示しているわけで
す。
男女の賃金格差を調べるのは必須ですね。性別の診断を《月額の基本給》でや
ってみましょう。えっ?基本給よりも所定内賃金(通常支払う手当も含んだ額)
の方がいいんじゃないかって?むむ、オヌシ素人さんじゃありませんな。でも
性別は基本給でやった方がいいですよ。なぜなら所定内賃金で診断をすると、
その中には家族(扶養)手当などの生活関連手当も含まれますから、どうしても
男性の方が高くなりやすいのです。基本給で診断しても男性の方がかなり高い
ようだと『女性の基本給が低水準です。改善しませう』というありがたいコメ
ントが頂けるわけです。
【参考】ここをクリック

役職別や職種別、あるいは所属部署別の賃金格差は、原則として《月額の所定
内賃金》で診ます。でも、会社によっては役職手当がスズメの涙ぐらいしか支
給されていないとか、ある職種の賞与がすご〜く多いなんてこともありますね。
だから念のために《残業込みの月額》や《年収》でも診ておきましょう。転ば
ぬ先の杖です。

次は統計賃金との比較です。ここでいう統計賃金とは、"実支給額"の年齢別賃
金です。間違ってモデル賃金と比べっこしないでくださいね。それをやっちゃ
うと社長さん達が「我が社の賃金ってこんなに低水準だったのかぁ(T.T)」と
がっかりしてしまいます。
診断結果は『全体的に統計賃金より高いですぅ』とか『若年層は業界平均レベ
ルですが、中高年層の賃金水準はかなり低いですぞ』といったコメントになり
ます。

対象を絞って《課長の年収》や《営業マンの所定内賃金》などを統計賃金と比
較することもあります。小規模企業の統計資料を入手しづらいのが難点ですが、
金額の直接比較以外の使い道もありますからお試しあれ。
こういう診断をすると、すごくプロっぽい感じでしょう( ̄^ ̄)
【参考】ここをクリック

今回は、よく利用するグラフを紹介しました。
いつか続編をやることになったら別の診断項目も紹介しますネ。


【第4回】基本構想

基本構想は、これから作る人事制度の青写真です。
ここでこけたら皆こける。だからと〜っても大事。

ご用意いただくものは企業概要調査資料、診断結果、組織図ってとこですね。
再構築の場合は、現在の人事制度資料も用意しましょう。

●字を書く

まず等級数を決めましょう。等級は能力主義・成果主義等々に共通して必須な
ものです。なぜなら、これから導入する人事制度は能力や職務のレベルを判断
するのに等級を使うからです。

そういえば、公務員の等級制度を「職務等級」から「能力等級」へ変更するよ
うですね。一般人としては、民間をリードする素晴らしい組織に生まれ変わっ
て欲しいと思います。

中小企業の等級数は、5〜8くらいが活用しやすいです。
一般的には企業規模が大きい方が等級数も多くなりますが、学卒初任給の位置
付けその他モロモロの条件によっては30人の企業で8等級、300人の企業
でも6等級で十分、なんてこともあります。

各等級のレベル差は『文章で』大雑把でいいから決めておきます。

●絵を描く(ちょっと分かりづらいかもしれませんが)\(_ _)

次に組織図を単純にしたような絵を描いて、等級と対応させる作業を行います。
専門用語では職群といいます。管理職や超ベテラン社員(仕事の鉄人)などは
高い等級に位置づけます。例)管理職群は5〜7級

また、役職やコース(複線型)なども等級と対応させておきましょう。
役職については、職能等級はもとより職務等級でも××課長の職務は△△部長
の職務より責任・難易度が高いケースがありますので、複数の等級に位置づけ
ることが多いです。例)課長は5〜6等級

●数字を入れる

各等級の滞在年数や対応年齢を決めます。
標準的に昇格する場合の滞在年数・対応年齢は企業の賃金設計に活用し、モデ
ル賃金設定の基礎になります。例)1級−18歳−4年 2級−22歳−5年

その他に最も速く昇格する場合、最もゆっくりと昇格する場合、それぞれを決
めておきます。能力・貢献度の低い社員さんは、ある等級で『打ち止め』とい
う設定もここでやっておきましょうか。

簡易なものですが、これで基本構想が出来ました。\(^o^)/


【第5回】賃金設計

今日は手当設計の「ツボ」についてお話ししましょう。
それは、必要ない手当をすべてカットすることです。
カットすべき手当は、調査段階で資料確認・ヒアリングなどから見当をつけま
す。

「社長さん、へんな手当見つけちゃいました。この手当って一体???」

「何だったかなぁ。そうだそうだ、たしか勤続年数の長い社員は2万円、短い
 社員は1万円に決めたんだよ。それ以外に特別な意味はないんだけどね」

「それじゃあ残しておく必要はなさそうですね。カットしちゃいましょう。そ
 の分だけ基本給を増やすことができますよ。どうしても勤続を考慮したいな
 ら基本給の中で考えましょう」

「そうだね、うんうん、いいよ、カットしちゃおう」

「あれ?こっちにもヘンテコリンな手当がありますよ〜」

「あっ、それも意味ないんだけど・・・ということは、やっぱりカット?かな」

そもそも手当とは、基本給の枠内で設計することに無理がある場合、必要に応
じて設定するものですよね。だから営業手当や役職手当はすごく便利に活用で
きる手当なのです。

生活関連手当の中では、家族手当に捨て難い魅力を感じています。
なぜなら、等級制度を導入するときに
「会社は家族手当を支給することで社員の生活面もちゃんと考えているのだか
ら、他の賃金項目は実力主義でいくよ」
と言えるからです。ギチギチの能力or成果主義を導入すると、いつのまにか
運用面で年功に傾いてしまうことがあります。

それじゃあ必要ない手当って何?
そりゃあもう、たくさんたくさんありますよ〜。それも企業によって千差万別
です。

例えば、精皆勤手当も支給実態によってはいらない手当です。某社の精皆勤手
当はA君に毎月3万円、Bさんに毎月2万円というように個人別に定めていま
す。そして、その実態は欠勤有無にかかわらず支給している固定賃金です。
このように「貧弱な基本給」を補うために付けたと推測できる調整的手当はカ
ットの対象になります。

また、住宅手当と称するもので全社員一律1万円なんていう例もあります。
社宅に入れない人に支給するとか、借家住まいの人や世帯主に限定したものな
ら意味がありますが、これもいりませんよね。残業手当の割増賃金を計算する
ときにも、このような住宅手当は計算基礎額に含めなければなりませんから全
く意味がありません。

極めつけは、わけのわからない調整的手当です(奨励手当とかイロイロな名称
が付けられています)。この類の手当だけで基本給の金額を超えてしまうよう
な恐ろしい光景を目にすることがあります。
当然ながら、全部カットカットカ〜ットです。わぉ〜、快感!

こんな作業をしていくと、手当の数も金額も減ってすごくスッキリします。
だけどその分だけ基本給がアップしますよね。弊害はあるのかなぁ?

まず労働保険・社会保険ですが、基本給が増えてもその分だけ固定的手当が減
っていますから、これは全く問題ありませんね。

次に賞与ですが、「基本給×月数」で計算していると月数が減っちゃいます。
それって寂しい?
だけど今どき「冬のボーーナスが3ヶ月も出ちった。ラーキー!」なんて喜ぶ
おマヌケな人はいません。
だって基本給の3ヶ月で30万円もらうより、2ヶ月で35万円の方が嬉しい
でしょう?月数じゃなくて金額ですよ。だから賞与の配分方法を再設計すれば
即問題解決です。

退職金も「基本給×支給率」で計算している企業は大幅にアップしてしまいま
す。でも大丈夫。基本給を使わない計算方法で再設計しちゃいましょう。

だからですね、声を大にして言いたいことは、必要な手当だけ残して、残りは
基本給にまわしましょう、ってことなのです。
せっかく導入する等級制度ですもの、能力給や職務給の金額がゴージャスにな
るようにしたいですネ。


【第6回】昇給・昇格

まず言葉の定義を理解しておきましょう。

「昇給」とは、言うまでもなく賃金が上がることですね。でも賃上額は昇給で
上がったものとは限りません。ベースアップを行った年は、昇給+ベースアッ
プの合計が賃上総額になるからです。このことは別の機会に詳しく説明したい
と思います。

「昇格」とは、等級が1つ以上あがることをいいます。昇格することによって、
その人の社内の格付けがあがるわけです。だけど役職があがることとは直接関
係はありません。もちろん、役職と等級が連動するような設計をした場合は話
が別ですが。

役職が上がることは「昇進」といい、等級制度では昇格と昇進を区別していま
す。
Aさん「今度課長に昇格しちゃった(^^)」
Bさん「昇格じゃあなくて昇進したんだろ。同じ5等級のままじゃん。」

新しい制度を導入するときに最も考慮しなければならないことは、既存社員の
昇給・昇格調整です。
同一等級同一賃金でない場合は、同じ等級内で金額に幅を持たせています。
例えば5等級初号(300,000円)〜30号(360,000円)で見てみましょう。

5等級の社員全員が初号に格付けとなれば、何も気にすることはないのですが、
実際には様々な号俸に位置付けることになります。なぜなら、長年課長職にい
た人と課長になったばかりの人では同じ等級でも号俸が異なります。ベテラン
課長甲さんは5等級25号で350,000円、課長就任2年目の乙さんは5等級5号で
310,000円となります。

よく昇格要件として2年とか3年という期間を「最低在級年数(ある等級に必
ず留まらなければならない年数)」として定めています。
そのような定めがあると甲さんは(どんなに頑張っても)2〜3年待たなけれ
ば6等級にあがれなくなってしまいますね。これでは新制度導入によって動機
づけを図ろうとしても逆にやる気がなくなってしまう社員さんもでてきます。

甲さん「な〜にが頑張った人が報われる制度だよ(`_´メ) 。ケッ、新制度を
導入したせいでオレの出世は2年遅れちまったゼ」

あらあら、甲さんご立腹ですね。そこで調整が必要になってくるわけです。

例えば経過措置として、5等級20号以上の社員さんは、その年と過去の業績を
勘案して翌年の昇格も可能になるようにするのです。それなら甲さんも納得!

また、なんらかの理由により本来格付けるべき等級より1つ低い等級でスター
トせざるを得ない場合があります。多くは低賃金是正対象者です。このような
社員さんは、できるだけ早く本来あるべき等級にしなければなりませんから、
今度の昇給のときに昇格させて賃金を大幅にアップさせましょう。
逆に高いお給料を貰っているけどあまり高い等級に格付けられない社員さんは
調整給を付けて対応します。調整給は昇給や昇格をしたときに減額していき、
いずれはゼロ円になる暫定的なものです。

このような調整は『個人別』に行う必要がある場合が多いですから、新制度導
入前にすべての調整対象者をピックアップして、それぞれの調整方法を詳細に
パターン化しておかなければなりません。

人事制度というと賃金体系や評価制度ばかりに目がいきがちですが、一番大切
なことは昇給や昇格のしくみ作りや個人別の調整事項です。この部分があいま
いなままスタートすると大失敗をやらかすことになりますゾ。


【第7回】賃金改定

社員数の多い企業では、独自の賃金体系のしくみを制度化しています。最近で
は中小企業でも新しい賃金体系のしくみを導入するところが増えてきましたね。
そのような企業は、たいてい「賃金表」を作成しています。

もし「賃金表」がなかったら、昇給とベースアップの区別をすることが非常に
困難です。よって、ここでは社員さんの賃金を「賃金表」で管理していること
を前提に進めていくことにします。

昇給とは、賃金表の金額はそのままに、その賃金表の中のより高い金額に位置
づけられることです。人事評価結果その他条件によって個々の社員さんの昇給
額は異なります。
一方、ベースアップとは、賃金表の金額を変更して賃金水準そのものを上げる
ことです。現在のようなデフレ経済下では、企業生き残りのためにやむを得ず
ベースダウンを行って賃金水準を下げる企業もありますね。
「賃金表」には『手当の賃金表』と『基本給の賃金表』があります。

●手当の賃金改定

通常は手当に昇給はありません。でもベースアップはありますよ。

例1)家族手当の配偶者15,000円 → 17,000円にする
   これは配偶者2,000円のベースアップです。

例2)役職手当の課長50,000円 → 55,000円にする
   これも課長5,000円のベースアップです。

手当の改定は、数年に一度、あるいは不定期で行い、切りのいい金額するのが
一般的です。なぜって?基本給とちがって補助的な賃金項目ですから、毎年チ
マチマ変えなくてもいいでしょう。でも役職手当は残業手当的要素があります
から、毎年改定してもいいかもしれませんね。

●基本給の賃金改定

基本給の改定作業は少し複雑になります。それは多くの企業で定期昇給という
しくみを採り入れているからです。よく新聞で「A社は賃金制度を見直して定
期昇給廃止」というような記事を目にしますが、年功要素を排除しただけで昇
給のしくみそのものが無くなるわけではありません。

まず基本給の昇給について見てみましょう。

例1)Aさんの年齢給・・・25歳120,000円 → 26歳123,000円に昇給
   Aさんは、年齢給で3,000円の昇給をしました。

例2)Aさんの能力給・・・2等級10号80,000円 → 2等級15号82,000円に昇給
   Aさんは、能力給で2,000円の昇給をしました。

両方で5,000円の昇給(200,000円 → 205,000円)になりましたね。

続いて基本給のベースアップ(賃金表の書替)を見てみましょう。
ベースアップにはベースとなる賃金表に一定比率を乗じる「定率」、一定金額
を上乗せする「定額」、定率と定額をミックスさせる方法の3つが一般的です。
ここでは最も簡単な「定額」によるベースアップを行ってみます。
※実務では、賃金項目別に異なる改定方法で行うことがあります。

例1)年齢給は定額で1,500円ベースアップする
   Aさんは、年齢給で1,500円のベースアップがありました。124,500円
例2)能力給は定額で2,500円ベースアップする
   Aさんは、能力給で2,500円のベースアップがありました。84,500円

両方で4,000円(205,000円 → 209,000円)のベースアップです。

さて、Aさんの基本給賃上額はいくらになるでしょう?
もうお分かりですよね。それは昇給とベースアップを足した9,000円です。

ベースアップを定額で行うと給料の高い人も安い人も同じ金額だけ増えます。
したがって、賃金の低い人ほどアップ率は高くなります。定率で行うと賃金が
高い人も安い人もアップ率は変わりません。それでは定額定率ミックスで行う
と・・・いかようにも設定することができます(それは、定額・定率をマイナ
スに設定することができるからです)。

昇給が(全体で)ゼロということは考えにくいですが、ベースアップがゼロと
いう年はあるでしょう。現にここ2〜3年はそのような企業をよく目にします。
賃上額をゼロにしたいときは、法的な問題を抜きにすればベースダウンを行う
ことで可能です。昇給総額と同額のベースダウンを行えばいいのです。
しかし、中小企業では余程の事がない限りやって欲しくありません。もともと
低い賃金水準がもっと低くなってモチベーションが下がってしまいます。
「少数精鋭」を目指すはずが「オモチャの兵隊」になったら大変ですから。


【第8回】賞与配分

人事制度を導入しようと考えている会社の多くは賞与を支払うことを制度化し
ていますね。

賞与の計算方法を見てみると、いまだに意外と多いのが基本給(又は一部の手
当を加えた金額)に支給月数を乗じるものです。
ここでは標準を2.0ヶ月としておきましょう。

もともと評価制度がある会社は、評価結果に応じて基本月数にプラスマイナス
をしています。
例えば、貢献度によって 2.2ヶ月、2.1ヶ月、2.0ヶ月、1.9ヶ月、1.8ヶ月って
な感じです。

今期は少しもうかったから標準を2.5ヶ月にしよう(^o^)
すると 2.7ヶ月、2.6ヶ月、2.5ヶ月、2.4ヶ月、2.3ヶ月になります。

逆に業績が悪化したので標準を1.5ヶ月に下げよう(>.<)
すると 1.7ヶ月、1.6ヶ月、1.5ヶ月、1.4ヶ月、1.3ヶ月になります。

なんか変ですね。
会社がもうかって賞与がたくさん支給されるほど貢献度による差が(率で)少
なくなっています。
それなら、もうかったときは案分計算して、
2.75ヶ月、2.625ヶ月、2.5ヶ月、2.375ヶ月、2.25ヶ月にすりゃあいいじゃん。

まあ、それでもいいですよ。でもね、最初に予算を決めて「ある計算式」にあ
てはめたら全員の賞与がパパッと計算できたら楽ですよね。しかもそれが予算
ピッタリの金額になったらスゴイと思いませんか?

それは簡単にできるんです。設計方法はイロイロあるので、ここで紹介とまで
はいきませんけど、設定した係数やポイントを+−×÷で計算するだけ。
貢献度の反映だって自由自在にできちゃいます。

これを私は「総額配分方式」と呼んでいます。もう10年くらい前の話ですが、
表計算ソフトで予算ピッタリになるウマイ方法はないかと、イロイロ計算式を
作って遊んでいたら思いついた方法です。

我ながら自画自賛していたのですが、ある会社で似たような方法を採用してい
ました。アハハ、みんな同じようなことを考えるんだなぁ、と思っていたら、
同じような計算式が載っている本まで発見!
調子こいて「スゴイでしょ、この方式は」なんて自慢してたら大恥かくとこで
したヨ。

賞与は、毎月の給与と違って増減させる自由度が高いので、人件費管理をする
のにマコトに都合がいいものです。頑張った社員さんに大きく還元するしくみ
だって賞与なら簡単にできてしまいますヨ。

例えば、総額配分方式で評価係数を上から 1.5、1.2、1.0、0.9、0.8ににする
と、最高の評価だった人は 1.5倍の賞与になります。一方、最低の評価でも大
きくさがりません。この例では、良い評価の人に多く支払うしくみにしていま
すから普通(1.0)の評価の人は平均より少なくなります。

わがコレクション「総額配分方式」も今では12パターンほどに増えました。
新しい制度を導入するときは、是非こんなしくみも取り入れてください。


【第9回】退職金

最近、退職金のご相談が増えています。
なんでだろ〜♪なんでだろ♪

適格年金の税法上の問題や新会計基準への対応などもあるでしょうが、ご相談
のほとんどはそんな難しいことではありません。

人事制度構築のツボということですと・・・

退職金が「基本給(基礎額)×支給率」方式だったので、賃金体系を変えたら
全員の退職金が大幅アップですぅ^-^;

それはイラナイ手当を削って、その分だけ基本給を増やしたから退職金まで増
えちゃったのですね。
だから新しい退職金は、基本給が関係しない方法がエライのです。

ポイント制なんかいいですね。等級や役職におうじたポイントを基礎として、
評価加算ポイントなども組み込めば、貢献度を重視した制度になります。
それとも賃金表に似せた退職金表なるものを作ってもいいかも。
いやいや、思い切って退職金制度そのものを廃止しちゃいましょうか。
おしまい。。。

おっと、ここで話が終わったら読者の皆さまから怒られそう。
ポイント制について、もう少しつっこんでみましょう。

初めてポイント制退職金を導入するときは、その時点で社員さん達が退職した
らいくら支払うかを計算します。計算は従前の計算方法でね。
次に1ポイント当たりの金額を決めましょう。
10000円にしておきましょうね。分かり易いから。

いまA君が退職したら50万円になるなら、A君の退職金は50ポイント分に
なります。実際には、A君はまだ退職していませんから50ポイントを持点と
します。あとは新制度で毎年ポイントを積み重ねていけばいいのですよ。
カンタンでしょう(^^)

ついでの話ですが、この前こんな相談がありました。

トゥルルルー♪ 電話がかかったきました。山田社長からです。

「退職金の相場がわかる資料ありませんか?」

「あれ?山田ストアさんは退職金制度ありましたっけ?」

「いやぁ、仲間の会社には退職金制度があるからウチも導入したいなって。ど
んなのを作ったらいいと思います?」

「やめときましょうよ。今ないんなら、ない方がいいって。ヘタに導入すると
あとが大変ですよ。あとで泣いちゃうかもしれないよー」

「でも・・・」

「どうしても退職金制度を作りたいなら中退金オンリーがいいですよ。掛け金
は経費で落とせるし、退職しても別の会社に持っていけるし。あとは等級制度
があるからポイント制もいいかな。あっ、そうそう、最新の資料の入手方法で
したね・・・(長いから省略→バックナンバーをご参照ください)」


退職金をやめたい会社があったり(こっちが多い)、新しく導入したい会社も
あったり(こっちは少数派)、ほんとイロイロですね。
なんでだ♪なんでだろ〜♪


【第10回】評価制度の設計

評価制度を設計するときのイチバンのツボといったら
・・・それは、ちゃんと運用できるものを作ること!です。

な〜んてアバウトな表現なのでしょう。
ここで話を終わらせておけば、共感を得ることもなければ、反感をかうことも
ないのですが。でも、それができないソンな性分。

ということで、私見ですが・・・
評価制度を作る過程では、とにかくイイモノを作ろうという「設計重視」のや
り方があります。一方で、なるべく楽に運用できるモノを作ろうという「運用
重視」のやり方があります。
私は、どちらかというと後者が好みです。

「設計重視」で作ると、すごくカッコイイしくみを作りたくなります。
特に専門家が報酬をもらって作る場合は、その傾向が強くなります。
しかし、実際に運用するときに「すっげーメンドウじゃん」「管理者がわけわ
かんないって泣いてます」「制度の手直しもコンサルがいないとできない」と
なってしまうことが多いのです。

「運用重視」で設計すると、それは他社には見せたくないようなカッコわるい
ダサダサな仕組みになるかもしれません。
評価要素の数も少なく、評価シートなんてトコロドコロに「メモガキ」や「ラ
クガキ」があったりして。ホントにこれで大丈夫?ってこともあります。

でも大丈夫!
もともと100%満足いく評価制度なんて存在しないのですから。
だったら、60%満足できるものを作って、それを手直しながらよりイイモノ
に仕上げていくことが大切。
最初は80%満足しても複雑すぎて運用をおろそかにしたり、ガヂガチに作っ
てあるため自社で手直しもできないようでは「ちょっとどうかなぁ」と思っち
ゃうわけです。

例えば、評価要素の数に焦点をあててみましょう。
A・・・具体的な評価要素40項目で構成する評価シート
B・・・ごくありきたりな評価要素10項目で構成する評価シート

一見、Aの方が運用しやすいように思います。
しかし、変化の激しい時代ですから仕事のやり方もどんどん変わっていきます。
実際には、Bを採用した方がやりやすい会社が多いのではないでしょうか。

もし、Aで設計したら、合計100%にするために40項目にそれぞれウエイ
トを設定します。さて、会社の方針や仕事内容が変わったので評価要素を見直
さなければ・・・「評価要素数」や「重要度に応じたウエイト」が変わるので、
シート全体の見なおしが必要になります。それを苦もなくやれる会社ならAを
採用してもうまくいくでしょう。
でも・・・普通は、めんどっちいことはキライですよね。

Bで設計したら、会社の方針が変わっても、ほとんどは大括りの評価要素の中
の話で済んでしまいますね。もちろん、着眼点として具体的内容を記載してお
き、その部分を変更することで対応するわけです(メモガキ、ラクガキOK)。
評価要素数が少ないため、そのぶん評価のあいまいさは残りますが、それでも
頻繁に大掛かりな修正をしなくて済むことは大きなメリットです。

会社によって、運用しやすい仕組みは異なりますが、いずれにしても設計段階
から「いかに楽に運用できるか」を考えて進めることが大切ですヨ。
楽に運用できることが制度を根づかせることにつながるのです(^^)


【第11回】評価者エラー

評価者は、間違いのない評価をしなければなりません。それが出来なければ、
どんなに素晴らしい評価制度を導入しても公平な評価なんて望めませんよね。
しかし、人間はえてして間違いをおかすことがあります。

そこで今回は、評価者が陥るさまざまなエラーをまとめてみました。

◆ハロー効果 → 一部の鮮明な事実に惑わされて、全体を見誤ること

 ハローとは後光のことです。よく、あの人は後光が射して見えるっていいま
 すよね。何か素晴らしい部分があると、その人の行為すべてが良くみえてし
 まうことです。

◆中心化傾向 → ほとんど平均点の近くに点をつけること

 評価に差をつけることを好まない気持ちを持っていたり、評価に自信がない
 とこのエラーが出やすいのです。ようするに評価がヘタな人。

◆極端化傾向 → SやDを多くつけること(※SABCD5段階評価の場合)

 とにかく差をつけなければいけないという気持ちある人がおかすエラーです。
 ちょっとしか差がなければ、同じ評価でもいいと思うのですが、この傾向に
 陥ってしまうと、それでは気が済まないんですね。

◆寛大化傾向 → 全般的に甘くつけること

 評価者の不得手な分野について、あるいは部下に好かれたい気持ちや温情的
 に甘くつける人がいます。「イイ上司」でいたいですからねぇ。

◆厳格化傾向 → 全般的に辛くつけること

 評価者の得意な分野について辛くつけたり、対比誤差(後述)によるエラー。
 はっきりいって、部下から嫌われてます。本人は気づいてないかもしれない
 けど。

◆対比誤差 → 自分と部下を比較して考課すること

 たとえば責任感の強い評価者は、責任感について低い評価をする傾向があり
 ます。自分と比べたらいかんぜよ。
 絶対評価なら「基準」とくらべなくっちゃ。
 相対評価だって、自分じゃなくて対象者の集団の中でくらべっこしましょう。 

◆論理的誤差 → 複数の評価要素をそれぞれを勝手に結び付けてしまうこと

 甲君は非常に規則正しいから責任感も強いだろうし、仕事も正確であるはず
 との思いこみ。私は髪が薄いから、男性ホルモンが多くて胸毛モジャモジャ
 だろうって? いいえ、つるつるすべすべお肌です(^^)

◆期末効果 → 評価の実施日に近い期末の状況によって評価してしまうこと

 評価実施日の1ヶ月前から急にはりきって仕事を始めたA君。ず〜っと前か
 ら頑張っていたかのような錯覚をして、高く評価してしまうエラーです。
 期の最初から最後までまんべんなく観察して評価してあげましょう。

◆印象固定効果 → 一度思いこんだ印象が、その期の評価に影響すること

 集団お見合いなどで「第一印象から決めていました」 のようなもの。
 噛めば噛むほどアジがでる人もいるのですがねぇ。
 例えば、『新評価制度導入物語』に出てくる助手のガイド君みたいな人。


ほかにも一般的にはあまり知られていませんが、次のようなエラーを確認して
います。読者のみなさま、これ以外に何かありましたら教えてくださいネ。

◇ヨッパライ誤差
 
 晩酌をしながらの評価なんて、部下をバカにしていますよね。
 とうぜんながら、評価内容はろくなもんじゃないことが想像できます。

◇YESマン誤差 
 
 A君は社長のお気に入り。そのA君の上司は私。
 社長から「わが社のホープA君をよろしく頼むよ」といわれたら、どうした
 ってイイ評価をつけちゃいますよ。

◇不倫効果

 特別な感情は評価にも影響するってことです。ハイ。


【第12回】評価結果の調整

最終回は目標管理にする予定だったのですが、制度を動かすうえで必要不可欠
である「評価結果の調整」を掲載することにしました。
こっちの方が大事ですから。
目標管理は、いずれあらためて掲載したいと思います。

評価結果を調整する一番の目的は、評価者エラーを調整することにあります。
Vol.11を読み返していただくと分かりやすいと思いますヨ。

それでは、はじめましょう。
評価結果を調整することは「必要悪」といわれています。
なぜ「必要悪」なのでしょうか?

それは基準と比べて評価する「絶対評価」を行っても、最終的に通信簿のよう
にランク毎に定めた定員に当てはめて、評価を調整するからです。
これを相対配分っていいます。

ある社員の調整前の点数がいくらよくても、それ以上にみんながイイ点数をと
っていると低いランクに当てはめるため、「いったいこの評価はなんだったん
だー」ってことになるわけです。

だったら、やらなきゃいいジャン。いいえ、それでも調整は必要です。だって
社員に支払う給与や賞与の予算は青天井じゃありませんから。それと評価者エ
ラーの調整もありますし。

それでは調整方法を例で見てみましょう(実際はもうちょっと複雑ですけど)。

ある会社に2つの部門があり、それぞれ5人の社員がいます。
調整前の点数はこのようになりました。

【甲部門】新井80点、飯野78点、上杉69点、江本47点、岡島41点、
【乙部門】角田77点、木村74点、国島66点、毛塚58点、小柳50点

※評価要素ウエイト調整や複数評価者の調整は済んでいるものとします

この会社では、合計10人を上から並べてSABCDの5段階で評価します。
オールSで100点、オールDだと20点です。

制限分布はS=10%、A=20%、B=40%、C=20%、D=10%になるように
決めましょう。・・・ってことは、Sは1人だけですね。

調整前は、甲部門の新井さんがトップ、次は同じく甲部門の飯野さんです。

さぁ、ここからは電卓か表計算ソフトが必要になりますよ。
(おおっと、今は読み流してくださいネ)

全体の平均は64点になりました。
ここで、両部門の平均点に着目してみましょう。

【甲部門】平均63点
【乙部門】平均65点

乙部門の方が甲部門より2点甘くなっています。でも、理論上の平均点は60点
になりますので、両部門とも甘いといえますネ。

このように評価結果が甘くなる(逆に辛くなることもあります)のは、いくつ
かの要因が考えられます。
まず、評価者が「寛大化傾向」というエラーを犯している場合。
そのほかに、評価基準が低レベルって場合もありますネ。

いずれにしても、このままでは不公平なので全体の平均64点をベースにして、
甲部門の社員さんに1点プラス、乙部門の社員さんから1点マイナスしてみま
しょう。

【甲部門】新井81点、飯野79点、上杉70点、江本48点、岡島42点、
【乙部門】角田76点、木村73点、国島65点、毛塚57点、小柳49点

これが最も単純な調整方法です。いわゆる甘辛調整っていいます。

でも待てよ、評価者が評価に差をつけたがらない「中心化傾向」や、その逆の
「極端化傾向」の調整はどうするんだ?
それを加味して調整をするためには「標準偏差」を求めて行います。

ここからは、電卓ではちょとムリかな。表計算ソフトでも出来ないことはない
けどメンドウ。

実務では、専用ソフトを使うかプログラムを組むことになります。
「じんじ屋エール 人事評価シリーズ」なんか最高ですよ。
守備範囲も広いし(^-^)v チョコっとPRでした。。。

調整結果は次のようになりました。

【甲部門】新井78点、飯野76点、上杉69点、江本51点、岡島47点、
【乙部門】角田80点、木村76点、国島65点、毛塚55点、小柳44点

ななっな〜んと、乙部門の角田さんの点数が甲部門の新井さん、飯野さんの点
数よりも高くなってしまいました。ナゼかというと、乙部門の方が全体的に点
数の広がりが小さかった(中心化傾向)ので、角田さんの点数は低目にでてい
たと言えるのです。

さて、昇給のための評価は(メンドウだから)行わないで、夏と冬の賞与評価
をウエイト調整したもので昇給決定している企業も多いと思います。そのよう
に企業では・・・理論上の平均点に合わせましょう。
夏と冬の賞与の平均点が異なると、そこで更なる調整をするようでヤヤコシイ。
だから、事前にやってしまいましょう。

調整結果は次のようになりました。

【甲部門】新井74点、飯野72点、上杉65点、江本47点、岡島42点、
【乙部門】角田76点、木村72点、国島61点、毛塚51点、小柳40点

そんなわけで、S評価は乙部門の角田さんに決定!


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